遅霜から梨を守る

この土日は霜が降りそうだったので、開花後の梨を霜害から守るため、2日連続で深夜3時から灯油を焚いた。全滅して100万円単位の損害を受けることを思えば、早起きだって、数万円の灯油代だって関係ないのだ。

3時には既に地面の草に霜が付き始めていてびっくり。気温は0℃~-1℃。前任者の西尾さんに作業の要領を教えてもらいながら、真冬のような寒さの中で園内に火を灯すと、暖気が風に乗り上昇、垂れていた梨の花が頭を上げて少しかわいく感じる。

2時間ほどが経ち朝が近づくと東の空が白んでくる。その湿度のある空気はさすがは山間部の農園なだけあって、早朝登山における日の出までの、あの静かな変化と興奮と似たものがある。しばらくぼうっと眺めていた。

霜害から梨を守れた安堵とともに家路につき、しばし仮眠をとってから、ふたたび出勤。寝ぼけ眼で農薬散布(防除)をした。防除は任されてから2度目でまだまだ慣れない。薬や水の量、機械の運転に気を遣い、緊張は続く。その後も道の駅への挨拶や商工会への相談など、まだまだ終わらない経営引き継ぎの事務作業。4月からのしんどい日々。前任者の経営の苦労をここでようやく知る。

分からないこと、決めかねること、それをすべて判断するのが経営者で、そのたびに悩む。だけど相談相手や、気にかけてくれる人がたくさんいる。農園の従業員はみな僕よりも年上で作業経験も長い(引き継いだ僕が一番の未経験者である)し、園外にも商工会や同世代の仲間がいる。担当の農業普及課から霜害の心配の電話もいただいた。

ラッキーな環境だなと、そんなことを思いながら恵那市街までドライブして、事業用にちょっといいハンコを買った。