梨とジベレリン
日中は暑くて上着を脱いでしまう暖冬。豊水梨の剪定をしています🍏
豊水の枝は、他の品種に比べてしだれ気味です。昨年切った枝の先端から出た枝が寝てしまうことが多く、やや扱いづらい。他の品種では、枝先からはまっすぐ上を向いて枝が立ってくれるのですが・・・。
こういったように、枝がしだれるのは木材の「あて材」組織の形成、発達が弱いからです。あて材とは、何らかの原因で幹や枝が斜めになったときに、樹自身が樹体を持ち上げて真っすぐに立て直すのですが、その際に作られる特殊な細胞の組織構造のことです。幹の断面を見ると、年輪幅が広くなるので分かります。
針葉樹だと斜面下側、広葉樹だと上側の年輪幅が広くなります。それぞれ圧縮あて材、引っ張りあて材と言います。(ちなみに年輪幅が広い方が南を指すという話がありますが、あれは不正確です。おそらく日当たりの良い南斜面に針葉樹が植林されていることが多いのでしょう)
枝垂桜や豊水梨は、このあて材形成が弱いので、一度枝が寝ると寝たままになってしまうのです。
ところで、このしだれ性について調べてみると、ジベレリン(ぶどうを種無しにするのによく使われる植物ホルモン)を新芽に塗布すると、なんと枝がまっすぐ伸びるようになるんだそうです。
これはもしかしたら豊水梨の栽培に使えるかも…実験してみよう…と思ったら、そんなことはとっくに研究がおこなわれていました。平成20年には、新梢伸長促進を目的としたジベレリン
使用の登録もなされたようです。
豊水の枝が倒伏してしまうのは、理想的な樹形を作っていく幼木管理の際の懸念材料だったので、近い将来改植する際には試してみるつもりです。
けっこう重要な知見だと思うのですが、専門書や農業雑誌では見かけたことが無いような。ジベレリンペーストを枝先端に塗るというのが、忙しい春先のタイミングではかなりの手間なのかもしれませんね。